山梨県都留市の鳥類相
はじめに
 都留市は山梨県の東部、相模川水系桂川の源流に位置し(地図1、地図2)、人口約3万人、面積約16、000ヘクタールの市である。周りを標高1000メートル級の山に囲まれており、市のほぼ中心部を桂川が流れている。
 都留市の鳥類については、日本野鳥の会甲府支部(以下、甲府支部)が調査を行っているが、そのデータは公表されていない。都留市大幡にある「宝の山ふれあいの里ネイチャーセンター(以下、ネイチャーセンター)」からは27科55種が記録されているのみである。
 筆者は、2001年7月から2005年12月までに都留市の鳥類調査を行った。ここでは、その調査で確認できた鳥類について報告する。
地図1
地図2
調査方法
 調査は、2001年7月から2005年12月までに月5、6回の頻度で行った。市の中心部を重点的に調査したが、林道や河川敷など徒歩や自動車で行ける場所、登山道が整備されているいくつかの山についても、必要と思われる時期に調査した。
 調査中に出現したすべての鳥類を記録し、範囲は特に定めなかった。夜行性の鳥類も確認できるように、昼間の調査と並行して夜間調査も行った。調査には8倍の双眼鏡、25倍のスコープを使用した。
調査結果
 確認できた鳥類は40科114種であった。(表1) (鳥類目録) このほか、都留市内での確かな記録として1997年9月14日にアカエリヒレアシシギ、2000年11月10日にオオミズナギドリ、2004年6月20日にアカショウビンが傷病鳥や死体としてネイチャーセンターで記録されている。また、1987年には都留市鹿留でイヌワシの繁殖行動が観察されている(長尾信一氏 私信)。山梨県自然保護教育振興会編(1997)からはクマタカが、山梨県森林環境部みどり自然課編(2005)からはイスカの観察記録が報告されている。先述の27科55種の記録のうち、今回の調査で筆者が確認できなった種はコサギ、ツツドリ、コノハズクである。これらを合わせると、都留市で記録された鳥類は合計42科123種になる。
 今回の調査で確認できた鳥類以外に、都留市に隣接する大月市ではヨタカ、ヒメアマツバメ、コルリ、キクイタダキ、イワヒバリ、オオマシコ、ハギマシコが観察されたため、前記の種も都留市に出現するものと思われる。今回の調査では確認できなかったキバシリも観察される可能性がある。
考察
 都留市はほとんどが森林であり、植林されたスギやヒノキが多く見られるが、落葉広葉樹がまとまって残っている場所もある。桂川に沿って人家が集中しており、その周辺には水田や畑、ススキ草原や雑木林などのいわゆる里山と呼ばれる自然環境が広がっている。
 先述の通り、周りを標高1000メートル級の山に囲まれた谷のような地形をしているため、観察される鳥類にはつぎのような特徴があった。周年観察されるサギ類はアオサギとゴイサギだけであり、その他のサギ類は稀である。桂川は川幅が狭く急流であるため、都留市川茂の小さなダム以外ではカモ類が観察されなかった。
 山梨県初記録となったミヤマガラスの出現、局地的なオナガの分布、減少していると推測されるコジュケイ、今年の調査では確認できなかったソウシチョウの動向、また、周年観察されるが繁殖の確認できなった鳥類も多い。これらについては、今後も継続して調査をしていきたい。野外観察では確認・識別しにくい鳥類、渡りのルートや越冬地として都留市を利用する鳥類については鳥類標識調査を行いながら、こうした課題を明らかにしていきたいと考えている。
引用・参考文献
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高野伸二,1992.『フィールドガイド日本の野鳥 増補版』日本野鳥の会.
やまなし野鳥の会会長・日本野鳥の会甲府支部支部長許山韶編,1992.『やまなし野鳥の会・日本野鳥の会甲府支部創立20周年記念誌』.
中村登流・中村雅彦,1995.『原色日本野鳥生態図鑑<陸鳥編>』保育社.
中村登流・中村雅彦,1995.『原色日本野鳥生態図鑑<水鳥編>』保育社.
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日本鳥類保護連盟編,2002.『鳥630図鑑 増補改訂版』. 
フィールド・ミュージアム研究編集部編,2003.『フィールド・ノート No.13』.
叶内拓哉・安部直哉・上田秀雄,2004.『日本の野鳥』山と渓谷社.
五百沢日丸・山形則男・吉野俊幸,2004.『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』文一総合出版.
山梨県森林環境部みどり自然課編,2005.『2005山梨県レッドデータブック』.
●この報文は、平塚市博物館研究報告「自然と文化」No.29に投稿させていただいたものです。
(都留文科大学大学院  西 教生)   

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